-*- Text -*- Debian の全体像 Debian GNU/Linuxについて小史含め全体解説 対象,Linuxは低レベルで知り得ている層 Debianの特徴,構成,構造,海外状況など インターネット上の情報源(国外) (ですます調。紹介は「である。でした。する。」?) BEGIN ■ Debian GNU/Linuxについて by 鵜飼 文敏 Linuxは様々なディストリビューションと いう形で配布されています。古くはSLSが 広く使われていました。近頃はSlackware やRedHatが人気があり書籍などもこれらの ディストリビューションをベースにしたも のが数多く出ています。 DebianというのもまたLinuxのディストリ ビューションのひとつです。Debianは特に そのパッケージ管理の強力さが他よりも傑 出していると言えます。ここではDebian GNU/Linuxの簡単な紹介をします。 ■Debian GNU/Linuxとは? Linuxシステムは,Linuxカーネルだけで はありません。どのディストリビューショ ンでも様々なフリーソフトウェアをシステ ムとしてまとめあげることで,便利なディ ストリビューションとなっています。特に gccやEmacs,GNU libcや基本的なユーティ リティはGNUソフトウェアはLinuxシステム の重要な部分となっています。 そもそもGNUプロジェクトというのはフリー なライセンスで使用できるコンピュータシ ステムを開発し配布することです。GNUプ ロジェクトではHurdというカーネルを開発 していますが,まだまだ実用に使える段階 ではありません。しかし,フリーなライセ ンスで実用的に使えるカーネルとして Linuxというものが既に存在しているわけ です。Linuxをカーネルに採用したGNUシス テムがあってもいいということです。GNU プロジェクトから支援を受けて 1993年, DebraおよびIan Murdock氏が開発したのが Debianです。そもそもDebianという名前は この二人の名前に由来しています。その発 祥からDebianはGNUプロジェクトの直系の 子孫であるといえますし,現在もDebianの 開発者達はそう考えています。Debianのこ とをDebian GNU/Linuxと呼ぶのもこれが GNUプロダクトとLinuxに支えられたシステ ムだということを表しているのです。 Debian GNU/Linuxの特徴としては ・自由に使用したり再配布することが できる。 ・活発で開放的な開発。 ・数多くのパッケージ。 ・強力なパッケージ管理システム。 ・バグ追跡システム。 などがあります。特に「開放的な開発」 「パッケージ管理システム」「バグ追跡シ ステム」が他のLinuxディストリビューショ ンと違いがあるところでしょう。 原稿執筆時点ではDebian-1.2(rexと呼ば れる)ですが,既にDebian-1.3(boと呼ばれ る)がフリーズしています。これが出版さ れている頃には予定ではDebian-1.3が配布 されていることになっています。なお, Debian-1.3の次はDebian-2.0(hammと呼ば れる)になります。現在はまだx86アーキテ クチャが主要なサポートプラットフォーム ですが,Atari,Amigaなどのm68kやsparc やalphaなども開発が行なわれています。 Debian-2.0がでる頃にはこれらのアーキテ クチャもちゃんとサポートされる予定です。 なおアーキテクチャ依存のバイナリはそれ ぞれ配布する時にbinary-i386,binary- sparc,binary-alpha,binary-m68kといっ たディレクトリにわけられています。また アーキテクチャに依存しないバイナリパッ ケージ(ドキュメントとかスクリプトとか) はbinary-allというディレクトリに入れら れています。 ■自由に使用・再配布できる Debian GNU/Linuxはその名の通りGNUプロ ダクトと同じように自由に使用することが できます。Debianの公式パッケージは通常 GNU一般公有使用許諾(GPL)で定められた条 件の下で自由に配布することもできます。 Debianは基本的にanonymous ftpで世界中 にミラーされ配布されていますが,CD-ROM を作って配布しているところもあります。 詳しくはhttp://www.debian.org/にある 「Getting Debian by FTP」や「Getting Debian on CD」を見るといいでしょう。 GPLに従っているためDebianのパッケージ はbinaryディレクトリと並立してsourceディ レクトリにパッケージと等価なソースコー ドがおかれています。ユーザは必要があれ ばバイナリパッケージでなくソースパッケー ジを使って,ローカルな修正をほどこしイ ンストールすることなどもできるようになっ ています。もちろんGPLの条件に従ってい れば,これらのパッケージをベースにした 特殊な配布版を作成,配布することも許さ れます。 またDebianのFTPディレクトリにはnon- free,contribディレクトリがあり,多くの パッケージが含まれています。これらの中 にはソースがない場合もありえます。non- freeやcontribにあるパッケージはそれぞ れの条件にしたがって配布することができ ます。中には単にインストーラとしての機 能しか持たずにアプリケーション本体は別 に必要とするものなどもあります。例えば Netscape Navigatorのパッケージはこうなっ ています。こうすることで商用のパッケー ジであっても,Debianのパッケージ管理シ ステムのもとで管理することができるよう になっているのです。 ■開放的な開発 DebianはLinuxカーネルや他のフリーソフ トウェアと同じようにインターネットを通 じて多くの人々が協力することで開発が行 なわれています。ここが他のLinuxディス トリビューションと違うところと言えます。 Debianでは開発方針も開発者の同意によっ てまとめられています。 Debianでは簡単な手続きをおこなうだけ で開発に参加することができます。もしディ ストリビューションに含めて欲しいパッケー ジがあれば,Debianの環境にあうように作っ たパッケージをまとめあげればいいのです。 それをDebianプロジェクトに提供すれば, Debianの一部となり広く配布されるように なります。おまけパッケージとして追加さ れるのではなく,他のパッケージと同じよ うに扱われます。Debianではパッケージが それぞれうまく独立しているので,パッケー ジごとに開発することが簡単にできます。 ただしパッケージを誰が作ったのかを特定 することが必要になってきます。誰が作っ たのかわからないようなパッケージだと安 心して使えないかもしれません。そのため, パッケージを作成する時はchangesファイ ルと呼ばれるパッケージ名や開発者,パッ ケージに関する説明,関連するファイルの MD5チェックサムとファイルサイズなどを 書いたファイルにPGPで電子署名をするこ とになっています。開発者の公開鍵はまと めてftp://ftp.debian.org/debian/doc/ debian-keyring.tar.gzとして公開されて いるため,これで電子署名のチェックを行 なうことができます。また基本的にソース も配布することになっていますが,ソース パッケージではdscファイルと呼ばれるオ リジナルのソースのorig.tar.gzとパッケー ジのための差分diff.gzとのMD5チェックサ ムとファイルサイズを書いたファイルにも PGPで電子署名するようになっています。 パッケージの開発そのものができなくて もバグレポートを送ることでもDebianの開 発に協力できます。Debianのバグ追跡シス テムを使うことでバグレポートはしかるべ きパッケージ保守者に伝えられバグフィッ クスが行なわれるからです。もしくは制御 ファイルに書かれている保守係に直接 e-mailを送ってもいいでしょう。保守係の e-mailアドレスはdpkgの--statusオプショ ンにパッケージ名を指定して得られる出力 のMaintainer:の欄を見ればわかります。 このようにバグの修正やユーザの改良案な どをいれていくことで徐々にDebianは便利 に使いやすくしていくことができます。 現在,Debianでは世界中の200人弱の開発 者が900近くものパッケージを保守,改良 しています。現在はBruce Perens氏が President,Daniel Quinlan氏がSenior Vice President,Brian C. White氏がVice President for Engineeringとなっており, Ian Murdock氏がBoard of Directorsの chairmanとなっています。 ■パッケージ Debianは非常に多くのパッケージからな りたっています。Debianのパッケージはそ れぞれ別々にインストール,アップグレー ドができるようになっています。パッケー ジ間の依存関係についてはパッケージの制 御ファイルに記述された情報を参照して Debianのパッケージ管理システムがうまく 面倒をみてくれることになっています。 ■debファイル Debianのパッケージの名前は次のように つけるようになっています。 package_version-debianver.deb packageの部分がパッケージ名となってい ます。versionがパッケージのバージョン 番号を表しています。そしてdebianverの 部分がDebianのパッケージとしてのバージョ ンを表しています。.debというのがバイナ リパッケージのファイルにつける拡張子で す。 debファイルはcontrol.tar.gzとdata.tar .gz(とdebian-binaryというファイル)を含 むarファイルとなっています。control. tar.gzに様々なパッケージの制御情報が, data.tar.gzにコマンドやマニュアルなど が含まれています。従ってarとtar,gzip があれば展開できるわけですが,制御情報 をちゃんと扱うためにもパッケージ管理ツー ルであるdpkgを使って扱うべきです。ファ イルフォーマットバージョンがかわった時 もarフォーマットであるとは限りません。 それにdpkgを使うことで制御情報のファイ ルを見たり,data.tar.gzだけを展開する こともできますのでdebファイルを扱う時 は常にdpkgを使えばよいでしょう。詳しく はdpkgのマニュアルを見るかdpkg --help を見てください。なお非Debian環境のため にdpkgのtar.gzも提供されています。 ■パッケージ分類 Debianのパッケージは次のように分類 されています。 ・基本ユーティリティ(base) Debianシステムの基本となるユーティリ ティ群。UNIXとして必要最小限なツールや 他のパッケージをインストールするために 必要なツールなどからなりたっています。 これは最初にインストールした時点で含ま れています。パッケージになっているのは アップグレードする時に利用するためです。 例えば1.2から1.3へアップグレードする時 などに一から全部インストールしなくても ここのパッケージでアップグレードしてい くことでシステム全体のバージョンを上げ ることが可能です。 ・管理ユーティリティ(admin) システムの資源やユーザのアカウントを 管理するためのユーティリティ群。例えば acctやat,cron,quotaなどのユーティリティ やapmやpcmcia-csなどもここに含まれてい ます。 ・通信ユーティリティ(comm) モデムなどを使って通信するためのユー ティリティ群。mgettyなどやFAX関係のツー ル,uucpやzmodemなどがここに含まれてい ます。インターネットを使うためのツール やアプリケーションはnetやmail,newsや webに含まれています。 ・開発用(devel) 開発用のユーティリティやコンパイラ, 開発環境,ライブラリなど。 gcc,bison,makeなどや開発に必要なラ イブラリなどがあります。debパッケージ を作るために必要なパッケージなどもあり ます。またkernel-sourceなどもここに含 まれています。 ・ドキュメント(doc) FAQやHOWTOなど。 Debianのドキュメントやjargonやmanpages などがあります。またこれらを表示するた めのmanやinfoなどのプログラムも含まれ ています。 ・エディタ(editor) 様々なエディタ。 edからXEmacsまで20個近くあります。 viもelvis,nvi,vimなどがそろっていま す。 ・エレクトロニクス(electronics) 回路シミュレータなどがあります。 ・ゲーム(games) たくさんのゲーム。 fortuneからnethack,xpilotなど数十個 のパッケージがあります。 ・グラフィックス(graphics) エディタ,ビューワやコンバータなど。 svgalibからmesa,ImageMagick,mpeg関 係などがグラフィックス関係のものがここ にあります。 ・アマチュア無線(hamradio) AX.25パケットラジオ関係のパッケージ ・インタープリタ(interpreters) インタープリタやマクロ言語など。 perlやpythonなどやcpp,m4などがありま す。これはDebian-1.3で新設されました。 ・ライブラリ(libs) 様々なライブラリ。 tclやtk,slangなどもここにあります。 これもDebian-1.3で新設されました。 ・メール(mail) メールを送ったり読んだり書いたりする ユーティリティ群。sendmail,smailや mh,metamailなどがあります。 ・数学(math) 数学関係のパッケージ。 bc,dcからgnuplotなどがあります。 ・ネットワーク(net) ネットワーク関係のデーモンやクライア ントなど。 mailやnews関係はそれぞれ独立したディ レクトリにわけられています。web関係は Debian-1.3でわけられました。 ・ニュース(news) ネットニュースにアクセスするためのニュー スリーダーやサーバなど。 ・他のOS,ファイルシステム(otherosfs) 他のOSのエミュレータやファイルシステ ムをアクセスするためのツール。これも Debian-1.3で新設されました。 ・シェル(shells) コマンドシェル。 ach,csh,ksh,tcsh,zshといったもの からPlan9のrc,esや簡単なlsh,kissなど があります。 ・サウンド(sound) サウンドを扱うユーティリティ群。 ミキサーやプレイヤー,レコーダから CDプレイヤーまであります。 ・TeX(tex) いわゆるTeX関係。 TeXやLaTeX,AMSからdvi2psなどの出力系 やMetaFontなどもあります。 ・テキスト処理(text) テキストドキュメントをフォーマットし たりプリントしたりするためのユーティリ ティ。 gsなどからSGMLやtexinfoなどやispellな どもここにあります。 ・ユーティリティ(utils) 様々なユーティリティ。 dpkg関係のものもここにあります。また konがここに含まれています。これも Debian-1.3で新設されました。 ・Webユーティリティ(web) WWWサーバやクライアント,proxyなど。 これもDebian-1.3で新設されました。 ・X Window System(x11) XサーバやXクライアントなど。 XFree86 3.2はここに含まれています。 またXアプリケーションやウィンドウマネー ジャなどもいろいろと含まれています。 ・その他(misc) 上記の分類でうまく分類できないパッケー ジ。 さらに,以下の二つのディレクトリは公 式な配布というわけではないのですが,便 利なユーティリティも含まれているので, この下もチェックするといいでしょう。な おnon-freeはその性格上,CD-ROMとして配 布する時は含まれない場合がありますので anonymous ftpで必要なものだけ取得した 方がいいかもしれません。 ・contrib Debianディストリビューションとは認め られない配布条件だけれど,便利なツール をパッケージにしたもの。 acroreadやgimpなどがあります。 netscapeのインストーラもここに含まれて います。 ・non-free 使用や配布に制限があるパッケージ。 Copyrightをよく見て使用すること。 JDK,quakeやxvなどたくさんのパッケージ があります。 ■パッケージプライオリティ こういった分類の他に,パッケージには 五段階のプライオリティがつけられていま す。高いプライオリティから順にあげてい くと次のようになります。 ・Required 必ず必要となるもの。 ・Important UNIXとして使うために必要となるもの。 ・Standard 標準的なパッケージ。 Emacsなどがここに含まれてきます。 ・Optional ユーザが必要に応じてインストールすれ ばいいもの。X11などがここに含まれてき ます。 ・Extra 高いプライオリティと衝突するものや 特殊な要求をもっている人のみが必要とす るもの。 普通は,Optional以上のものをインストー ルするといいでしょう。後は好みに応じて Extraをインストールする(もしくはExtra のものでリプレースする)とよいでしょう。 ■パッケージ管理システム Debianをもっとも特徴付けているのはな んといってもこのパッケージ管理システム でしょう。Debianのパッケージ管理システ ムは非常に強力です。 ■管理ツール dpkg debファイルをインストールしたり,その 中身をチェックしたりするのに使うのが dpkgコマンドです。アンインストールする 時もdpkgコマンドを使います。 また現在インストールされているパッケー ジのリストやバージョン,ステータスなど もdpkgコマンドを使って調べることができ ます。パッケージに対する要求は以下の状 態に分類されます。これはdpkgの--listオ プションで行頭の1文字目のところで示さ れます。 ・u -- Unknown 不明。インストールするかどうかユーザ は何も表明していない。 ・i -- Install インストールもしくはアップグレードし たいパッケージ。 ・r -- Remove 削除したいが設定ファイルは残しておき たいパッケージ。 ・p -- Purge 完全に削除したいパッケージ。 以上の情報に関してはdpkgコマンドの-- get-selectionsで得ることができます。ま た,この出力を別のマシンで,dpkgコマン ドの--set-selectionsで入力してしてやれ ば複数のマシンで簡単に同じパッケージ群 になるように指定してやることができます。 現在のパッケージのステータスは以下の 状態に分類されます。これはdpkgの--list オプションで行頭の2文字目のところで示 されます。 ・n -- Not インストールされていない。 ・i -- Installed インストールされている。 ・c -- Config-files 設定ファイルがある。パッケージを removeしたがpurgeしていない場合など。 他のパッケージで置換された場合もこうな ります。 ・u -- Unpacked パッケージが展開された状態。 ・f -- Failed-config コンフィギュレーションに失敗した。 ・h -- Half-installed パッケージの展開はしたが,インストー ルが終っていない。 dpkg --listをとった時「rc」や「ii」に なっていないパッケージはうまく設定でき ていないと言えます。特に大文字になって いるのはなんらかのエラー状態であると考 えられます。 またパッケージの管理者やバージョンな どの情報はdpkgコマンドの--statusで調べ られます。あるファイルがどのパッケージ に属しているのかも同じくdpkgコマンドを 使って--searchで調べられます。 このように,ほとんど全てのパッケージ 操作はdpkgを使っておこなっています。ま たdpkgを使うフロントエンドとしては dselectがあります。 ■パッケージ依存関係 先に述べたようにDebianは非常に多くの パッケージからなりたっており,それぞれ 必要なものだけをインストールすることが できるようになっています。 しかし,パッケージの中にはあるパッケー ジの存在に依存していることもありますし, また他のパッケージと共存することがそも そもできないこともあります。そういった ことを無視してインストールしてもパッケー ジが使えないわけです。 またパッケージによっては,別のあるパッ ケージの存在というよりむしろパッケージ のあるバージョン(もしくはそれ以降のバー ジョン)に依存していることもあります。 特にダイナミックリンクしているライブラ リなどの依存関係は重要ですし,こういっ たバージョン依存することが多いわけです。 パッケージをインストールするにはこう いったパッケージ間の依存関係をしっかり と解消しておかなければなりません。 Debianではdpkgでこれらの依存関係を詳し くチェックしています。 もし依存しているパッケージがまだイン ストールされていないと,パッケージのイ ンストールそのものを拒否します。その場 合,依存しているパッケージを先にインス トールしなければなりません。なお,完全 に依存していなくても,このパッケージを 使う時にはあった方がいいというパッケー ジを指示しておくこともできるようになっ ています。 Debianではパッケージの相互関係は次の ように分類しています。 ・Depends (依存) このパッケージAが他のパッケージBがな いと動作しない場合,AはBに依存している ことになります。 ・Recommends (推奨) 他のパッケージBがなければ,このパッケー ジAを使う意味があまりないだろうという 場合,AはBを推奨していることになります。 ・Suggests (提案) 他のパッケージBが,このパッケージAの 機能拡張などをおこなうような関係の場合, AはBを提案していることになります。 ・Conflicts (衝突) 他のパッケージBが存在している,このパッ ケージAが動作しない場合,AはBと衝突し ていることになります。 ・Replaces (置換) 他のパッケージBのファイルを,このパッ ケージAが削除もしくは上書きする場合,A はBを置換することになります。 ・Provides (供給) このパッケージAをインストールすればパッ ケージBの機能をすべて使うことができる ようになる場合,AはBを供給することにな ります。 もし依存関係がすべて問題ないことがわ かれば実際にインストールされます。必要 があれば,インストールする前と後に実行 するスクリプトをパッケージに含めておく こともできます。これらはそれぞれ preinst,postinstと呼ばれています。 逆に必要なくなったパッケージをアンイ ンストールする場合も,本当に他のパッケー ジが必要としていないのかをチェックして からアンインストールしなければ,依存し ていたパッケージが使えなくなってしまい ます。Debianのパッケージ管理ツールdpkg は,これらのパッケージ依存関係もちゃん とチェックしてくれます。 もし何かに依存されていれば,そのパッ ケージをアンインストールすることは拒否 されます。もし依存しているパッケージが なければ実際にアンインストールされます。 アンインストールする時も必要があれば, アンインストール前と後に実行するスクリ プトを容易しておくことができます。これ らはprerm,postrmと呼ばれています。 ■仮想パッケージ さらにDebianでは仮想パッケージという 概念を導入しています。仮想パッケージと いうのは,ある機能を提供していることを 示す仮想のパッケージ名のことです。例え ばsmailやsendmailなどといったメール配 送エージェントは共にmail-transport-agent という仮想パッケージを提供していること になっています。このためメールの配送が 必要なパッケージはmail-transport-agent に依存しておくことにしておけばよいわけ です。smailやsendmailに依存しているこ とにする必要はありません。 ■多様性 (divert) またDebianでは多様性のサポートもして います。例えばviに関してはnvi,vim, elvisといったパッケージが存在します。 これらのパッケージが/usr/bin/viという 名前でインストールされてしまうと複数イ ンストールすることもできなくなってしま います。逆にそれぞれ/usr/bin/nvi, /usr/bin/vim,/usr/bin/elvisという名前 だけでインストールしてしまうとそのまま ではviで使えなくなったりして少し不便で す。aliasすればいいわけですがユーザ全 てにaliasを設定するのは面倒です。 Debianではdpkg-divertを使うことでviに 対するシンボリックリンクをちゃんと設定 してくれます。コマンドだけではなくてマ ニュアルの方も設定してくれます。こうす ることで複数のパッケージがある場合にシ ステムのデフォルトを簡単に設定すること ができるようになっています。 ■設定ファイル Debianのパッケージでは設定ファイルに 関して特殊な扱いをしています。設定ファ イルは自分用に変更することがよくあるわ けですが,パッケージをアップグレードす る時に設定ファイルも同じように勝手に更 新されてしまうと,パッケージのアップグ レードごとにいちいち設定ファイルを自分 用に修正をしなければならなくなります。 Debianではアップグレードする時に設定 ファイルが修正されたことを知ると今の設 定を残すか,それとも新しいものに置きか えるかなどを聞いてくれます。そのためパッ ケージをアップグレードする度に同じ設定 をしなおすことも必要ありません。 ■その場でインストール Debianのパッケージをインストールする のにわざわざシングルユーザモードになっ たりする必要もまずありませんし,もちろ んリブートが必要なこともほとんどありま せん。パッケージはその場でインストール, アップグレードができます。パッケージを インストールする前にデーモンを止めなけ ればならないなどといったこともありませ ん。 ■非Debianパッケージ 現在のDebianではalienというコマンドを 使うことでSlackwareのtgzによるパッケー ジやRedHatのrpmパッケージもDebianの dpkgによる管理システムの下でパッケージ 管理できるような形でインストールするこ とができるようにもなっています。そのた めRedHat用にしか作られていない商業パッ ケージなども問題なくDebianにインストー ルすることができるはずです。 また/usr/local以下はDebian管理システ ムの管理する領域とはなっていません。も しパッケージになっていないようなものを 自分でインストールする場合は/usr/local 以下にインストールするとよいでしょう。 そうすればDebianのパッケージをインストー ルしても消されたり上書きされることもあ りません。もちろんこの場合自分のインス トールしたプログラムの依存関係は見てく れませんが。 ■dselect Debianでは管理ツールであるdpkgだけで はなく,それを使ったフロントエンドであ るdselectも提供しています。dselectでは 様々なメソッドをサポートしており,ロー カルのハードディスクやCD-ROMからはもち ろん,例えばftp経由でパッケージをとっ てくるなどもできるようになっています。 ただし,現在のdselectはあまり使いやす いと言えるものではありません。なにか直 観に反する動作をしているように私も感じ ます。また,dselectはX11環境がなくても 使えるようになっているのですが,この点 もGUIが好きなユーザにとってはとっつき にくい点かもしれません。こういった dselectの問題点はDebianの開発者たちも よく認識しています。現在,新たなフロン トエンドを作成するためのチームが結成さ れ開発が進んでいます。 ■ソースパッケージ DebianはGPLの条件の下に配布されてるの でソースも常に入手することができます。 Debianのソースパッケージは普通はdscと 呼ばれるパッケージ名や開発者,diff.gz とorig.tar.gzのMD5チェックサムとファイ ルサイズを書いたファイルとorig.tar.gz とdiff.gzの三つからなりたっています。 orig.tar.gzはパッケージのもともとのソー スファイルで,これはDebianのパッケージ バージョンがあがっても変化しません。 Debianのパッケージにすることで変化した 部分はdiff.gzファイルに含まれています。 ソースを展開する時はこれらの三つのファ イルを入手し,同じディレクトリに置いて dpkg-sourceの-xオプションを使ってdscファ イルを指定するとdebファイルを作るため のソースが展開されます。dscファイルも 開発者によるPGP電子署名がされています。 ■カスタムカーネルパッケージ Debianでは標準的な構成のカーネルパッ ケージが用意されていて,インストールの 時にもこれが利用されています。しかし, インストールしたシステムや状況によって は自分でカスタマイズしたカーネルを利用 したくなります。ただ,普通にカーネルを インストールした場合,Debianのパッケー ジ管理システムの管理下からはずれてしま い,あまりうれしくありません。そういっ た場合を考慮し,Debianではカスタマイズ したカーネルをインストールするためのパッ ケージを簡単に作成できるようになってい ます。これによりカスタマイズしたカーネ ルもDebianのパッケージ管理システムによ りバージョン管理が行なえるようになって いるのです。 ■バグ追跡システム Debianには,ユーザや開発者が報告して きたバグの詳細を記録したバグ追跡システ ムがあります。報告されたバグは番号がふ られて,適当な人のもとに報告されます。 またWWWやメールサーバに管理されていま すので,必要があれば誰でも見ることがで きます。WWWならhttp://www.debian.org/ Bugs/にあります。メールの場合,本文に helpと書いてrequest@bugs.debian.orgに 送ると解説がかえっています。 このバグ追跡システムによりユーザは自 分のトラブルが既知のバグかどうかわかり ますし,開発者やパッケージ保守係はどこ をフィックスしていけばいいかを知ること ができます。 バグ報告をどのようにすればいいかにつ いてはftp://ftp.debian.org/debian/doc/ bug-reporting.txtを取得するか /usr/doc/debian/bug-reporting.txt を見るといいでしょう。 ■オンライン情報 /usr/doc/debian/にDebianに関するドキュ メントがあります。FAQも/usr/doc/debian/ FAQ/におさめられています。 パッケージには普通コマンドのオンライ ンマニュアルページやinfo(Texinfo)が含 まれています。使い方を知りたい時はman コマンドやinfoコマンド(もしくはEmacsの infoモード)で調べることができます。 さらに,パッケージをインストールする とオンラインマニュアルやinfo以外にも様々 なドキュメントを含んでいます。これらの ドキュメントは/usr/doc以下のパッケージ 名と同じディレクトリに保存されます。こ の中にはDebianに対してどのように変更し たかやコピーライトなどのドキュメントの 他使い方の説明や例などのドキュメントが 含まれています。インストールしたらこの ドキュメント類も読むといいかもしれませ ん。 ■インターネット上の情報源 Debian自体は ftp://ftp.debian.org/ で配布されています。日本では ftp://ftp2.linux.or.jp/pub/Linux/debian/ ftp://ftp.debian.linux.or.jp/debian/ にミラーされていますのでこちらから取得 するようにしましょう。それぞれ東京イン ターネット様,AT-Mインターネット様の御 好意により運営されています。 Debianの公式Webページは http://www.debian.org/ にあり,ここから様々な情報にアクセスす ることができます。なお,日本でも公式ミ ラーサイト http://www.jp.debian.org/ を立ち上げることになっています。これが 出版される頃にはできていることでしょう。 またdebian.orgで様々なメイリングリス トが運営されています。それを購読すれば 様々な情報を得ることができます。 例えば などがあります。ただしdebian-userは かなりトラフィックが多いのでまとめ送り してくれるdebian-user-digestにした方が いいかもしれません。これらの購読方法も DebianのWebページ http://www.debian.org/support.html に書いてあります。 END ■日本でのDebian関係の情報 Debian JP Projectによるパッケージのβ リリースを ftp://ftp2.linux.or.jp/pub/Linux/debian-jp/ ftp://ftp.debian.linux.or.jp/pub/debian-jp/ で配布しています。 Debian JP ProjectのWebページが http://www.debian.linux.or.jp/ にあります。ここから様々な日本語のドキュ メントにもリンクが張られています。 また,linux.or.jpで日本語によるDebian のメイリングリストを二つ運営しています。 日本語によるDebianのユーザの情報交換 の場です。Subject:にAPPENDと書いたメー ルを送ってください。自動登録されます。 Debian JP Projectのメイリングリストで す。Debian GNU/Linux用のパッケージの開 発(主に日本語関係)やドキュメントの日本 語訳などをおこなってくれる人を募集して います。これもSubject:にAPPENDと書いた メールを送れば自動登録されます。 END